デジタル世界は急速に変化しており、私たちは今、Web3.0の時代の入り口に立っています。ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットの概念であるWeb3.0は、AIと融合することで、これまでのマーケティングの常識を根底から変えようとしています。
株式会社シセイラボは、この変革期において「小さなグローバル企業」として、最新テクノロジーを駆使したマーケティングソリューションを提供しています。今回のブログでは、Web3.0とAI時代における新しいマーケティングのあり方について、体系的に解説いたします。
Web3.0とは何か
Web3.0とは、ブロックチェーン技術を基盤とした分散型インターネットのことを指します。SNSを代表するWeb2.0が中央集権的なプラットフォーム企業によってデータや価値が管理されていたのに対し、Web3.0ではユーザー自身がデータの所有権を持つことが最大の特徴です。
経済産業省の定義によると、Web3.0は「ブロックチェーン上で、暗号資産等のトークンを媒体として『価値の共創・保有・交換』を行う経済(トークン経済)」とされています。
Web1.0からWeb3.0への進化
Web1.0は『静的な情報提供』
情報の流れは一方向(読み込み専用)で、管理主体は個人や企業サーバーです。データはサーバー管理者が保有し、代表的な技術はHTML。
Web2.0は『相互交流やUGC/コンテンツ作成』
情報の流れは双方向(書き込み可能)で、管理主体はプラットフォーム企業です。データはサービス提供者が保有し、代表的な技術はSNS・API(アプリケーションプログラミングインターフェース)。
Web3.0は『自律的な価値交換』
情報の流れは分散型、P2Pで、管理主体は分散型ネットワークです。データはユーザー個人が保有し、代表的な技術はブロックチェーンやNFTです。
Web3.0の市場規模と成長予測
Web3.0市場は急激な成長を遂げており、現在の市場規模は約4.62億ドルを超え、2034年までに997.5億ドルへの成長が予測されています。特に金融やエンタメ以外の分野での応用拡大が期待されており、2025年には利用者数が1億人を突破する見込みです。
ブロックチェーン技術とトラストレス
トラストレスの本質的な理解
トラストレスとは、銀行や政府などの「信頼できる第三者機関を必要としない」性質を意味します。しかし、これは「信頼が一切不要」という意味ではなく、システム自体への信頼に基づいていることが重要なポイントです。
ビットコインを考案したサトシ・ナカモトの論文では、忠実な(プログラム通りに動作する)ノードの計算能力が、悪意のあるノードの計算能力を上回っている限り、中央管理者なしに取引の正当性を保証できることが示されています。
トラストレスシステムの段階
ブロックチェーンのトラストレス性は段階に違いがあります。いわゆる単一ノード方式はトラストレスではなく、運用者の信頼が必要です。特定複数ノード方式、コンソーシアムブロックチェーンでは、限定的なトラストレスを実現しています。そして、Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)などは不特定多数方式で、高いトラストレス性を実現します。
マーケティングにおけるトラストレスの価値
トラストレスシステムの導入により、企業と消費者の関係は従来の「信頼に基づく取引」から「検証可能な取引」へと変化します。これにより、マーケティングにおいても透明性が向上し、消費者はより安心してブランドとの関係を築くことができるようになります。
DAO(分散自律組織)
DAOの定義と特徴
DAO(Decentralized Autonomous Organization)は、中央管理者が存在せず、ブロックチェーン技術とスマートコントラクトによって自動的に運営される組織形態です。従来の階層構造を持つ企業とは一線を画し、参加者全員による民主的な意思決定を特徴としています。
DAOの分類と進化段階
Coinbaseの元CTO、Balaji Srinivasan氏は、権限分散の度合いからDAOを3つに分類しています。
一つ目の分類が、CEO DAOと言われるDAOで明確な意思決定者が存在します。二つ目の分類が、Bureaucratic DAO と言われるDAOで官僚的ポジションの人々が意思決定をする仕組みです。そして三つ目は、Autonomous DAO と言われる形態で完全に自律的に機能するDAOです。一般にDAOと言われるのは3つ目の形態で、理想型がこれに当たります。現実的には、CEO DAOから始まり、組織の成熟とともに権限を分散させていくアプローチが効果的とされています。
DAOの導入事例
ビットコイン
ブロックチェーン技術を活用し、中央管理者なしで仮想通貨の取引を管理・運営する世界初のDAOとして知られています
Gaudiy
エンタメ×ブロックチェーンビジネスを展開するGaudiyは、「Gaudiy Protocol」を通じて誰もが意思決定に参加できる仕組みを導入しています
国内企業での応用
日本企業においても、従業員のモチベーション向上や業務効率化を目的としたDAO的組織運営の導入が進んでいます
マーケティングにおけるDAOの活用
DAOを活用することで、ブランドコミュニティの運営を分散化し、消費者により多くの決定権を与えることが可能になります。これにより、ブランドロイヤリティの向上と、より本質的なコミュニティ形成が期待できます。
NFT(非代替トークン)
NFTの基本概念と特徴
NFT(Non-Fungible Token:非代替トークン)は、ブロックチェーン上で唯一無二のデジタル資産を表現する仕組みです。デジタルデータの真正性を証明し、所有権を明確化できることが最大の特徴です。
NFTの主要な活用領域
デジタルアートと文化創造
デジタル作品に希少性と所有権を付与することで、新たなアートマーケットが形成されています
地域創生とコミュニティ形成
新潟県山古志村の「Colored Carp」は錦鯉をモチーフにしたNFTアートが電子住民票として機能し、過疎地域の財源確保に貢献しました
企業のマーケティング活用
博報堂×JALの「KOKYO NFT」:地域体験をNFT化し、関係人口創出を目指す実証実験
企業のマーケティング活用
航空会社での活用:JALの都道府県シールNFTやANAの独自マーケットプレイス
顧客ロイヤリティプログラム
博報堂とProofXによる富士薬品のNFTクーポンキャンペーンでは、継続的な顧客との繋がり創出に成功しています。
NFTとRWAの融合
Real World Assets
現実世界の資産(不動産、美術品、貴金属など)をNFT化することで、従来よりも容易な分割所有や売買が可能になります。これにより、新たなビジネスモデルの構築が期待されています。
Web3.0とマーケティング
Web3.0マーケティングの特徴
Web3.0時代のマーケティングは、従来の中央集権型アプローチからコミュニティ主導型へと根本的に変化しています。
コミュニティビルディングの重要性
Web3.0プロジェクトは、分散性、透明性、信頼性を軸としたコミュニティ形成が不可欠です。企業は一方的な情報発信ではなく、ユーザーと共に価値を創造する姿勢が求められます。
ユーザー主導のデータ活用
従来の企業主導のデータ収集ではなく、ユーザーが自発的にデータを提供するインセンティブモデルが重要になります。
トークングラフマーケティング
Web3.0上でユーザーが所有するトークンの情報「トークングラフ」を基に、その人の属性や嗜好を推測し、パーソナライズされたマーケティングを展開する手法です。
Web3.0マーケティングの実践手法
リワードプログラム
トークンやNFTを活用した報酬システムにより、ユーザーの積極的な参加を促進します。
パートナーシップ戦略
分散化されたエコシステムでは、他のプロジェクトとの協力が不可欠です。技術協力、共同プロモーション、マーケットプレイス提供などの形で実現されます。
教育とエバンジェリズム
Web3.0の概念や技術を一般ユーザーに教育することで、市場の認知度向上を図ります。
透明性と説明責任
すべての活動をブロックチェーン上で透明化し、コミュニティに対する説明責任を果たすことが重要です。
NFTとメタバースを活用した新手法
特定の顧客に限定版の商品や特典をNFT化して限定コンテンツを提供し、ロイヤリティを向上させます。
バーチャル広告とイベント
メタバース内でのプロモーション展開や、NFT所有者向けの特別イベントを通じた体験型マーケティングを実現可能に
AI時代のマーケティング戦略
AIマーケティングの現状と進化
2025年現在、AIはマーケティング担当者が最も重要と考える技術トレンドの第1位(63%の支持)となっています。AI技術の進化により、従来の人手中心のマーケティングプロセスが劇的に変化しています。
AIマーケティングの主要領域
ハイパーパーソナライゼーション
AIによるリアルタイム分析により、ユーザー一人ひとりに最適化された体験を提供します
マルチモーダルAIの活用
テキスト、画像、音声、動画を統合した包括的なコンテンツ生成が主流となっています
予測分析と自動最適化
顧客の行動パターンや市場トレンドを予測し、キャンペーンの効果を事前にシミュレーションする機能が実用化されています
リアルタイムマーケティング
顧客の行動に対して即座に最適化されたマーケティング施策を展開できるようになりました。
生成AIによる広告制作の革新
Runway、Luma、Minimaxなどの革新的なAIプラットフォームにより、制作の質とスピードが同時に向上しています。従来数カ月かかっていた企画・制作・配信プロセスが、数週間から数日で完了するまでに短縮されています。様々な複合的な要因が、時間単価型から成果報酬型へのシフトを加速させビジネスモデルを変化させています。
AIとWeb3.0の融合による新たな可能性
分散型AI(DeAI)
ブロックチェーン上でAIモデルを分散運用することで、データプライバシーを保護しながら高度な分析を実現します。
トラストレスAI
AIの判断プロセスをブロックチェーンで記録することで、透明性と説明可能性を向上させます。
AIによるスマートコントラクト最適化
AIがスマートコントラクトの実行を最適化し、より効率的な取引を実現します。
Web3.0とAI時代のマーケティング統合戦略
Web3.0とAIを単独で活用するのではなく、両技術を統合した包括的なマーケティング戦略、ハイブリッド型アプローチが今後の成功のカギとなります。
データ主権とAI分析の融合
ユーザーが自身のデータを管理(Web3.0)
AIがプライバシーを保護しながら分析を実行
パーソナライズされた価値提供の実現
分散型コミュニティとAI自動化
DAOによるコミュニティ運営
AIによる自動的なコミュニティ管理とエンゲージメント向上
リアルタイムでの意思決定支援
NFTとAIパーソナライゼーション
ユーザーの行動データをAIで分析
個別最適化されたNFT特典の自動生成
動的な価値提供システムの構築
実装における課題と対策
技術的課題
- スケーラビリティの課題に対して、ブロックチェーンの処理能力向上がソリューションに
- インターオペラビリティの課題に対して、異なるブロックチェーン間の連携がソリューションに
- ユーザビリティの課題に対しては、一般ユーザーにとっての使いやすさ向上UXリサーチを
倫理的・規制的課題
- プライバシー保護の観点では、GDPR、CCPAなどの規制遵守が働きます
- AI透明性の観点では、Explainable AI(説明可能なAI)の実装が期待されます
- 分散型ガバナンスの観点では、適切な意思決定プロセスの確立がカルチャーに
企業が取るべき戦略的アプローチ
段階的導入戦略
Phase 1
AIを活用した既存マーケティングの最適化
Phase 2
NFTやトークンを活用したロイヤリティプログラム導入
Phase 3
DAOを活用したコミュニティ運営の分散化
Phase 4
完全統合型Web3.0×AIマーケティングの実現
Phase 5
Web3.0とAI両分野の専門知識を持つ人材の育成
Phase 6
外部パートナーとの戦略的連携&継続的な学習とアップデートの仕組み構築
Phase 7
顧客体験設計の再定義、従来の企業中心から顧客中心への完全なシフト
透明性と参加性を重視したブランド体験の構築
コミュニティ主導の価値創造プロセスの確立
新時代のマーケティングパラダイム
Web3.0とAI時代のマーケティングは、単なる技術の進歩ではなく、マーケティングの根本的なパラダイムシフトを意味しています。
核心的な4つの変化を本日お持ち帰りいただければ幸いです。一つ目は『中央集権から分散へ』、企業主導からコミュニティ主導のマーケティングへの変化です。二つ目は、『所有から参加へ』、データや価値の所有権がユーザーに移行する変化。三つ目は、『自動化と人間性の融合』でAIの効率性と人間の創造性の協働が加速する変化。そして四つ目は、『透明性と信頼』、ブロックチェーンによる検証可能な取引関係の変化です。
当社は、「創造性で資産を増やすマーケティングパートナー」として、この変革期においてWeb3.0、AI、従来のデジタルマーケティング手法の最適な組み合わせによる最新技術の統合的活用、ユーザーのデータ主権を尊重した透明なマーケティング戦略、つまり顧客中心設計をベースにしています。
急速に変化する技術環境に対応する柔軟性を持った継続的なイノベーション、その上で、ブランドと顧客が共に価値を創造するエコシステムの構築によるコミュニティ主導型のコミュニケーションを実現します。
2025年以降、マーケティングはより人間中心的で分散的でインテリジェントなものへと進化していきます。企業の成功は、この変化を理解し、適応し、それを競争優位に転換できる能力にかかっています。株式会社シセイラボは、お客様とともにこの新しい時代のマーケティングを探求し、持続可能で価値ある関係を築いていくことをお約束いたします。
