はじめに
Step1で市場と自社ブランドの現在地を把握し、Step2で新規市場カテゴリの創造方法を学んだ企業が、次に直面する課題は「どの顧客に、いかなる価値を提供するのか」を明確に定義することです。
これが、価値の創造というStep3のテーマです。
正確には、Step1で把握した市場から、どのセグメントを選び、その中でどのターゲット層に、いかなるニーズに応えるのか。そして、その顧客にとって、自社ブランドはいかなる存在であるべきなのかを、戦略的に定義するプロセスが求められます。
本ブログでは、セグメンテーション→ターゲティング→顧客インサイト→ベネフィット→ブランドエクイティ→戦略エクイティという6つのステップを通じて、「価値の創造」の本質を解説します。
セグメンテーション
市場を「細分化」する
セグメンテーションとは、市場全体を共通の特徴、ニーズ、行動パターンを持つ顧客グループ(セグメント)に細分化するプロセスです。
市場全体は極めて多様です。年齢、性別、所得水準、ライフスタイル、価値観、購買行動など、顧客に関する変数は無限にあります。全ての顧客に同じ施策でアプローチすることは、営業効率の観点からも、顧客満足度の観点からも機能しません。そこで登場するのがセグメンテーションです。
セグメンテーションの目的
リソースの最適配分
限られた予算、人員、時間を、最も利益を生み出すセグメントに集中投下することで、ROI(投資対効果)を最大化する
顧客満足度の向上
顧客の多様なニーズを理解しそれぞれに最適化された商品やサービス、マーケティング施策を提供することで顧客満足度を高めます
新しい市場機会の発見
細分化された小さなセグメントの中に、既存企業が見落とした未充足ニーズや新しい市場機会が眠っていることを発見します
セグメンテーションの4つの分類軸
地理的セグメンテーション
地域、気候、都市規模などの地理的特性で市場を分割します。例えば、商品は同じでも、都市部と地方で購買行動が異なる場合があります。さらに国際展開を考える際は、国別の文化的差異も重要な分類軸となります
人口統計学的セグメンテーション
年齢、性別、家族構成、所得水準、職業、教育水準など、人口統計データで市場を分割します。これは最も従来的かつ実践的なセグメンテーション方法です。例えば、スキンケア商品であれば、年齢別(20代、30代、40代等)でのセグメンテーションが有効です
心理的セグメンテーション
消費者のライフスタイル、価値観、パーソナリティ、態度などの心理的特性で市場を分割します。これは人口統計学的セグメンテーションより深い層にアプローチするものであり、「健康志向」「環境意識の高さ」「プレミアム志向」といった心理的特性が分類軸となります
行動的セグメンテーション
購買履歴、利用頻度、ブランドロイヤリティ、使用機会などの実際の行動パターンで市場を分割します。例えば、「月1回以上購入する常連客」と「年1回程度の利用者」では、アプローチ方法が全く異なります
セグメンテーション実施時の評価基準「4R」の原則
Relevance(関連性)
セグメントが企業の事業目標に関連しているか。セグメンテーションの目的は、利益につながる顧客行動の変化を促すことであり、単に細分化することではありません
Responsiveness(反応性)
セグメント内の顧客が、マーケティング施策に対して異なった反応を示すか。セグメント内にばらつきが少なく、施策に対して同質の反応が見込めるほど、セグメンテーションの質が高いといえます
Reach(到達可能性)
そのセグメントに効率的に到達でき、コミュニケーションが可能か。いくら理想的なセグメントでも、ターゲティングと施策の実行が難しければ実務的でありません
Resilience(持続性)
セグメントが時間経過とともに安定しているか。移ろいやすいセグメントに投資することは、長期的な戦略構築の観点から危険です
ターゲティング
「狙う顧客」を選定する
ターゲティングとは、セグメンテーションで細分化した複数のセグメントの中から、自社が経営資源を集中投下し、マーケティング活動を展開する「狙う顧客層」を選定するプロセスです。
セグメンテーションが「市場の分類」であるのに対し、ターゲティングは「意思決定」です。すべてのセグメントを狙うことはできません。自社の経営資源、競争優位性、市場の成長性などを総合的に判断し、最も利益を生み出すセグメント(ターゲット)を選定します。
ターゲティングの評価基準「TAM」フレームワーク
TAM – 総需要市場規模
(Total Addressable Market)理論上、自社の製品やサービスが到達可能な全体市場の規模。例えば、プレミアム美容サービスのTAMは、「30~50代、都市部在住、年収500万円以上の女性」という定義の下で計算されます
SAM – 対処可能市場規模
(Serviceable Addressable Market)自社の事業戦略、地理的展開、流通チャネルを踏まえた上で、実際に対処可能な市場規模。TAMが全体像であれば、SAMは現実的な目標市場です
SOM – 獲得可能市場規模
(Serviceable Obtainable Market)自社が競争力を持ち、実際に獲得できると見込まれる市場規模。競合状況、自社の強み、マーケティング投資額などを考慮し、最も現実的な目標値として設定されます
ターゲットの欲求の種類マズローの欲求5段階説
ターゲティングを行う際は、「ターゲット顧客がいかなる欲求を持っているのか」を深く理解することが重要です。ここで役立つフレームワークが、マズローの欲求5段階説です。
心理学の大家アブラハム・マズローは、人間の欲求を5つの段階に階層化しました。この階層を理解することで、ターゲット顧客の本質的なニーズ(顕在的ニーズではなく、潜在的な心理的ニーズ)を把握できます。
生理的欲求
食欲、睡眠欲、排泄欲など、生存に不可欠な基本的欲求。マーケティングの文脈では「安価で実用的な商品」を求める顧客層がこれに該当します。例えば、コンビニエンスストアでの日用雑貨の購買は、効率性と価格を重視する生理的欲求の現れです
安全の欲求
身体的・心理的な安全、経済的安定、秩序、予測可能性を求める欲求。この段階では「信頼性」「安定性」「品質保証」が重視されます。例えば、金融サービスや医療製品では、安全の欲求が購買の最大の動機になります
所属と愛の欲求
社会への帰属感、仲間との一体感、他者からの承認を求める欲求。SNS時代にはこの欲求が極めて強く機能しており、「友人と同じブランドを使いたい」「コミュニティに属したい」という行動動機がこれです。ファッションブランドやSNS関連サービスは、この層の顧客を主ターゲットにしています
承認の欲求
他者からの評価や尊敬を求める欲求。自分が特別であること、独自性を持つことへの欲求も含まれます。「ステータスシンボル」「自分らしさの表現」といったマーケティング訴求は、この階層に訴えかけています。高級ブランドの多くは、この承認欲求を巧妙にターゲットにしています
自己実現の欲求
自分の可能性を最大限に引き出し、理想の自分に近づきたいという欲求。「自己成長」「自分の才能を活かす」といったテーマにこたえる教育サービス、キャリア開発プログラム、クリエイティブツールなどが、この層を対象としています
ターゲットの欲求層と購買行動の関係
重要な洞察は、ターゲット層の欲求のレベルが異なると、同じ商品でも異なる訴求が必要ということです。
例えば、腕時計の購買を考えてみましょう
- 生理的・安全欲求層「正確に時刻を表示できるか」「耐久性があるか」「価格は手頃か」が判断基準
- 所属・愛の欲求層「流行のブランドか」「周囲と同じステータスを得られるか」が重要
- 承認欲求層「他の人は持っていない稀少性」「ステータスの象徴」が判断基準
- 自己実現欲求層「自分のスタイルを表現できるか」「職人技の価値」「創造性への共鳴」が重要
同じ商品でも、ターゲットの欲求レベルで訴求ポイントは大きく異なります。この差異を理解することが、効果的なターゲティングの鍵になります。
顧客インサイト「無意識の欲求」を発掘する
顧客インサイトとは何か?顕在ニーズとの違い
顧客が何かを購買する理由は、本人が自覚しているニーズだけではありません。むしろ、本人さえ気づいていない深層心理の動機が、購買行動を大きく左右する場合が多いのです。
顧客インサイトとは、顧客の深層心理に隠れた、本人が自覚していない本質的な欲求・動機・願望を指します。これはニーズとは異なります。
顧客インサイトを発掘するプロセス
定性調査による情報収集
デプスインタビュー、グループインタビュー、行動観察調査(エスノグラフィ)など、開放的な質問を用いた定性調査を実施します。このとき、「なぜそうなのか」という問いを繰り返し、表面的な理由から深層心理へと掘り下げていきます。
購買データ・行動データの分析
POS(販売時点情報)データ、Webアクセスログ、SNSでの言及内容など、行動ベースのデータを収集・分析します。購買パターンの異常値や、予期しない関連購買パターンが、インサイト発掘の糸口になることがあります
データから仮説を抽出
収集・分析したデータから、「この行動の背景にはこのような心理が存在するのではないか」という仮説を複数立てます
仮説の検証
立てた仮説に基づいて、追加のインタビューや観察調査を実施し、仮説の妥当性を検証します
インサイトの言語化
複数の仮説から共通項を抽出し、顧客インサイトを明確に言語化します
顧客インサイトの具体例

ファストファッション顧客のインサイト
表面的なニーズ「トレンドの洋服が安く買いたい」
深層的なインサイトは「自分を他者とは異なるユニークな人間として認識してほしい」「社会への所属感を持ちながらも、その中で個性を表現したい」など
このインサイトに基づくと、単に「トレンドの服を安く提供する」のではなく、「多様な選択肢を提供し、その中で自分らしさを見つけられる環境」が顧客価値となります

プレミアム美容サービス利用者のインサイト
表面的なニーズ「肌をきれいにしたい」
深層的なインサイトは「人生において美しさに投資する自分を肯定したい」「自分は価値のある存在だと感じたい」「社会的ステータスの証として、自分に手をかけたい」
このインサイトに基づくと、単に「美肌効果」を訴求するのではなく、「自己投資」「自分を大切にする価値観」「ライフスタイルの一部」といった文脈で訴求することが有効になります
ベネフィット「顧客がえる価値」を定義する
ベネフィットと「特徴(フィーチャー)」の違い
マーケティングで最も頻繁に犯される誤りは、製品の「特徴」を強調することと、顧客にもたらす「ベネフィット」を伝えることの混同です。特徴の羅列では、顧客の心は動きません。ベネフィットに焦点を当てることで、初めて顧客は「この製品が自分にどのような価値をもたらすのか」を理解し、購買意欲が高まります。
特徴(Feature)
製品やサービスが持つ客観的な性能、属性、機能が特徴です。「このノートパソコンは、最新のプロセッサを搭載し、メモリは16GB、バッテリー持続時間は20時間です」
ベネフィット(Benefit)
ベネフィットはその特徴を利用することで顧客がえる具体的な価値や利益です。「このノートパソコンなら、複雑な画像編集やビデオ編集を素早くこなせるので、クリエイティブな仕事で真価を発揮できます。朝から晩まで一度も充電を気にせず、コーヒーを飲みながら創作に没頭できます」
機能的ベネフィット
製品やサービスの機能から直接生まれる、実用的で測定可能な利点。機能的ベネフィットは競合との比較が容易であり、また容易に模倣されます。そのため、機能的ベネフィットのみを訴求軸とすると、価格競争に陥りやすい危険があります。
- 「高速処理で作業効率が上がる」ノートパソコン
- 「夜中に肌を修復し、朝肌がつっぱらない」スキンケア製品
- 「24時間以内に商品が到着する」配送サービス
感情的ベネフィット
製品やサービス利用時に顧客がえる心理的な満足感、安心感、喜び、充足感。感情的ベネフィットは、顧客の深層心理に訴えかけ、ブランドロイヤリティの形成に重要な役割を果たします。
- 「創造的な仕事ができることへの自信」「プロフェッショナルである自分への誇り」ノートパソコン
- 「素肌に自信が持てる安心感」「自分を大切にしている充足感」スキンケア製品
- 「すぐに商品が届く安心感」「緊急の必要性に対応してくれる信頼感」配送サービス
自己表現的ベネフィット
製品やサービスを選択・利用することで、顧客が自分自身や社会に対して、いかなるメッセージを伝えるか、また自分のアイデンティティをいかに表現するか。自己表現的ベネフィットは、顧客がそのブランドを「自分らしさの表現ツール」として位置づけ、他ブランドとの差別化要因となります。
- 「最先端技術に触れるクリエイターとしての自分」「洗練されたライフスタイルの体現者」ノートパソコン
- 「自分に投資する価値観を持つ人」「社会的ステータスが高い人」スキンケア製品
- 「便利な生活を享受する現代人」「時間を大切にする効率志向の人」配送サービス
ターゲットのインサイトからベネフィットへ
重要なのは、ターゲットの顧客インサイトを理解して初めて、真のベネフィットが定義できるということです。同じ製品でも、ターゲットが異なると、強調すべきベネフィットも変わります。同じ製品でも、ターゲットインサイトが違えば、ベネフィットの強調ポイントは大きく異なります。
例えば、「時短調理家電」では、
- 忙しいキャリア女性をターゲットにした場合
- インサイト:「自分は社会的に価値のある存在だと感じたい。でも家事も完璧にこなしたいというプレッシャーを感じている」
- ベネフィット(感情的):「家事の負担を減らしながらも、大切な人のために心を込めた食事を提供できる喜び」
- 高齢者をターゲットにした場合
- インサイト:「体の衰えを感じながらも、独立した生活を保ちたい。また家族や友人への心遣いを忘れたくない」
- ベネフィット(感情的):「体の負担を減らしながらも、大切にしてくれる人への思いやりを実現できる満足感」
ブランドが持つ「無形資産」ブランドエクイティの定義
ブランドエクイティとは、ブランド名やシンボルによって形成される、企業にとっての「無形資産」の総称です。
より詳しく言えば、消費者がそのブランドに対して抱く認知、イメージ、信頼、ロイヤリティといった心理的要素が結集し、企業にもたらす価値を指します。
ブランド論の大家、デービッド・アーカー教授の定義によれば、ブランドエクイティは「ブランド名やシンボルと結びついた資産と負債の集合」であり、その資産価値が高いほど、企業の競争優位性が強く、長期的な利益獲得が可能になります。
ブランドエクイティの5つの構成要素
(アーカーモデル)
ブランド認知度(Brand Awareness)
消費者がそのブランドをどの程度認知しているかというシンプルながら重要な要素。購買検討時に消費者の頭に浮かぶ度合い(想起度)が高いほど、ブランドエクイティが強いといえます
認知度には2段階があります
- トップオブマインド(第一想起):「〇〇のカテゴリと言えば?」と聞かれて、真っ先に浮かぶブランド
- 非助成想起:カテゴリー内の複数ブランドの中の一つとして想起されるブランド
知覚品質(Perceived Quality)
消費者がそのブランドの品質をどのように評価しているか。客観的な品質ではなく、消費者の主観的な評価が重要です。
高い知覚品質により、消費者は価格プレミアムを認め、その価格を妥当だと考えます。同じ品質の競合製品より高い価格でも購入される理由は、知覚品質のエクイティがあるからです。
ブランド連想(Brand Association)
消費者がそのブランドと結びつけるイメージ、感情、価値観。例えば、「Nike」と聞けば「アスリート」「チャレンジ」といったポジティブなイメージが連想されます。
強力なブランド連想は、競合ブランドとの差別化を強固にし、顧客の心の中で独特のポジションを確立します
ブランドロイヤリティ(Brand Loyalty)
消費者がそのブランドに対して持つ継続的な愛着や信頼の度合い。ロイヤリティが高い顧客は、競合製品が登場しても乗り換えず、同じブランドを繰り返し購入します。
ロイヤリティが企業にもたらす価値
- 安定した売上ベース
- 価格競争の回避
- 新製品導入時の支持
- 顧客紹介による新規顧客獲得
その他の専有資産(Other Proprietary Assets)
商標権、特許権、流通チャネルの独占性、顧客基盤など、法的・契約的に保護されたブランド資産。これらは競合企業の参入障壁となります
ブランドの「戦略的方向性」を定義する戦略エクイティ
戦略エクイティとは:ブランドエクイティとの違い
ここまで述べてきた「ブランドエクイティ」は、既に存在するブランドが市場で獲得している資産価値を指します。
一方、戦略エクイティとは、企業が意図的に構築したい「ブランドの戦略的なあり方」を指します。言い換えれば、「これから消費者にいかなるブランドとして認識されたいのか」という企業の意思表示です。
戦略エクイティの3つの構成要素
ブランドの約束(Brand Promise)
企業が顧客に対して約束する、ブランド利用による基本的な価値。これは企業の最も重要な約束であり、すべての接点で一貫して守られるべきものです。
- Apple「革新的でシンプルな製品を通じた、創造的ライフスタイルの実現」
- Red Bull「困難な状況下での自分の能力の最大化」
- IKEA「民主的で手ごろな価格での美しい生活空間の実現」
ターゲット顧客像(Target Customer)
戦略エクイティが指向する「具体的な顧客像」。単なる人口統計的特性(年齢・性別・所得)ではなく、心理的・行動的特性を含む、より立体的な顧客像。
例えば、Appleのターゲットは「技術的知識がなくても創造性を発揮したい、感性豊かな人」です。これは「技術者」ではなく「創造者志向の人」というセグメンテーションを示しています。
ブランドの個性(Brand Personality)
ブランドを擬人化した場合に、それが「どのような人間的特性を持つ存在か」を定義する要素。ブランドパーソナリティは、ターゲット顧客が「自分の理想像を投影できるか」という観点で設計される必要があります。
- Ferrari「情熱的で、冒険心に富んだイタリア人男性」
- MUJI(無印良品)「余分な装飾を排した、知的で誠実な人物」
- Harley-Davidson「反体制的で、自由奔放な人間」
戦略エクイティから生まれる「統一性」
ネーミングとビジュアルアイデンティティ
ブランド名、ロゴ、カラーパレット、タイポグラフィが、戦略エクイティを視覚的に表現する
製品開発と品質基準
新製品は、ブランドの約束を強化するもとして開発される
価格戦略
価格は、ブランドが提供する価値の位置づけを明確にする
マーケティングコミュニケーション
すべての広告、PR、SNS投稿が、統一されたブランドメッセージを伝える
顧客体験(顧客接点)
店舗、Webサイト、カスタマーサービスなど、すべての接点で統一されたブランドエクスペリエンスが提供される
まとめ
これまで6つの要素を個別に説明してきましたが、実務ではこれら6つが統合的に機能することが重要です。
セグメンテーション
【市場の多様性を理解し、細分化する】市場を細分化し、複数のセグメントを識別
ターゲティング
【複数の選択肢の中から、最も価値のある顧客層を選ぶ】複数セグメント中から、企業の経営資源と競争優位性に基づいて、狙うべきターゲットを選定
ターゲットの欲求分析
【顧客が求める心理的レベルの欲求を理解する】マズロー欲求階層を参考に、ターゲット顧客が充足したいレベルの欲求を理解
顧客インサイト発掘
【本人さえ気づいていない本質的な欲求を発掘する】定性調査、行動データ分析を通じて、ターゲット顧客の無意識の欲求を理解
ベネフィット定義
【インサイトに基づいて、顧客にもたらす真の価値を定義する】ターゲットインサイトに基づいて、機能的・感情的・自己表現的ベネフィットを定義
ブランドエクイティの現状評価
【現在ブランドが市場で持つ無形資産を評価する】ターゲットが現在、そのブランドをどのように認知・評価しているかを測定
戦略エクイティ設定
【企業が意図的に構築したいブランドの戦略的姿を言語化する】企業が目指す「ブランドの在るべき姿」を、ブランドの約束、ターゲット顧客像、ブランド個性として言語化
施策への展開
設定した戦略エクイティに基づいて、製品開発、価格設定、コミュニケーション、顧客体験のすべてを統一
実例 – ラグジュアリーベース化粧品ブランドの戦略エクイティ構築
セグメンテーション
化粧品市場を、年齢別(20代、30代、40代)、価格帯別(ドラッグストア価格帯、プレステージ価格帯、ラグジュアリー価格帯)で細分化
ターゲティング
35~50歳、都市部在住、年収800万円以上、自分への投資を重視する女性
ターゲットの欲求分析
- 基本的な安全欲求(肌の安全性、品質保証)
- 高度な承認欲求(社会的ステータスの象徴)
- 自己実現欲求(自分の美しさの最大化)
顧客インサイト発掘
「プレミアム価格を払う自分を正当化したい」「人生において自分に投資することを肯定したい」「社会的地位を象徴する美しさを求めている」
ベネフィット定義
- 機能的「最高の成分で肌を美しく保つ」
- 感情的「自分を大切にしている充足感」「自信と誇り」
- 自己表現的「人生に投資する洗練された女性」
ブランドエクイティの現状評価
ターゲットが現在、そのブランドをどのように認知・評価しているかを測定
戦略エクイティ設定
- ブランド約束「人生という最高の舞台で、自分の本来の美しさを引き出す」
- ターゲット顧客像「人生経験豊かで、自分の価値観を持ち、美しさを自分への投資と考える女性」
- ブランド個性「優雅で、知的で、人生を謳歌する女性」
施策への展開
設定した戦略エクイティに基づいて、製品開発、価格設定、コミュニケーション、顧客体験のすべてを統一
STEP3
Step3で「価値の創造」が完了したら、Step1(市場把握)→Step2(カテゴリー創造)→Step3(ターゲット・戦略エクイティ定義)という流れが統合されます。次のStep4以降では、この戦略エクイティを実装するための、具体的なコミュニケーション戦略、ブランド体験設計、顧客関係構築へと進みます。
シセイラボが提唱するマーケティング全体像において、Step3は「思考から実行へ」の転換点であり、企業の戦略意図がブランド現実へと落とし込まれる重要なフェーズなのです。これらの要素が統合的に機能するとき、企業は初めて「顧客にとって本当に価値のあるブランド」として存在することができるのです。
その次のStep4では、このステップ3で構築した戦略エクイティを活かして、組織設計、マーケティングコンセプト定義へと進みます。
