定性目標の重要性。理想の未来を思い描くチカラ。

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本日は『定性(ていせい)目標』について株式会社シセイラボの考えを少しだけお伝えします。

いわゆる、『売上高1000億円達成!』のような定量目標は、数字や量であらわす目標です。数字やデータを明確に設定します。一方で、定性目標は、気持ちや雰囲気、言葉から生み出す絵にかけるイメージ目標です。数字ではなく、感想や印象を大事にします。

今回は、数値化できる定量目標だけでなく、理想の状態を明確に描く定性目標が、理想の未来を達成する重要な要素であることをお伝えできればと思っています。

どちらかといえば分かりやすく取り組みやすい定量目標の一方で、真の成長と持続的な成功には、組織の方向性と価値観を示す定性目標が大切です。

当社では、営業プロセスや活動プロセス管理で達成できる定量目標に加えて、個別具体的な定性目標を設定し、プロジェクトを進めています。

それでは定性目標の具体的な設定方法や使い方について触れていきます。

定性目標とは?

定性目標とは、数値化できない目指すべき状態や質的な変化に焦点を当てた目標のことです。一般的には、最終的なゴールやビジョンとして定義しますが、ゴールに至るまでのプロセスや行動の価値を重視するために、「行動目標」として設定する場合もあります。

定量目標が「何をどれくらい達成するか」に注力するのに対して、定性目標は「どのような状態になりたいか」「どのような価値を提供したいか」という理想像を明確にイメージします。

絵にかける明確なイメージは、組織全体が同じ方向性を共有し、より深いレベルでの成長を促進することができるものです。

定性目標では、企業の経営理念や社風に基づいて比較的自由に主観的な目標設定が可能です。自由な目標やイメージは組織や個人の社会的価値の向上、周囲との差別化、参加者のモチベーション向上といったブランディングも期待できます。

定性目標は、AIで画一化する現代ビジネス環境で企業の色を表現できる特別な存在です。そんな内容が伝われば幸いです。

具体的なイメージが大切

達成できない+意味のない定性目標とは?

定性目標という言葉自体は広く認知されており、何らかの形で使っている場面もあるかもしれません。しかし、例えば企業経営者の場合でも、「顧客満足度を高める。」「チームメンバーがプロジェクトを円滑に進める。」といった粒度で定性目標を捉えている場合があります。そして、その重要性も意義もあまり語られていません。

「顧客満足度を高める」という定性目標の理解や設定では弱く、しかも逆に会社内に混乱を招く可能性がある理由について少し触れたいと思います。

多くの企業が設定しがちな「顧客満足度を高める」という目標は、一見すると適切に思えますが、実際にはこの粒度で設定してしまうことで新たな問題を抱えてしまうという危険性を孕んでいます。

この問題点の核心は、曖昧な粒度のイメージ目標では「私たちの理想の状態」と「顧客の具体的な理想の状態」という両方の視点、参加者が欠如していることにあります。

定性目標が迷子を生み出す原因に?

曖昧さによる方向性の迷子状態

「顧客満足度を高める」という目標は、何を目指して取り組むべきかが不明確で、改善の方向性も、参加者も定まりません。その結果、企業全体が方針を見失い、具体的な対策を取ることができなくなってしまう危険性があります。

そもそもCS、顧客満足度という概念は抽象度が高く、参加者それぞれの認識の違いにより、目指すものがバラバラになりやすいのが実態です。これでは組織として足並みを揃えて顧客満足向上に取り組むことは困難です。

顧客満足度の目標設定は、数字で結果が評価されやすい営業職の目標設定と比べて抽象的になりがちです。そのため、達成度の判断が主観的になり、適切な評価や改善策の立案が困難になります。

定性目標を定めよう

具体的な状態を想像する

意味のある定性目標とは、従業員やスタッフ、顧客やユーザーなどの参加者が、理想の状態を具体的に想像できるものです。

定性目標を立てる最初のステップは、参加者の思いや課題と向き合い、理想像を明確にすることに尽きます。思いや課題には、参加者の理想的な在り方のヒントが隠れているため、これらと真摯に向き合うことで、自然と目指すべき姿を描くことができます。

さらに、現状の状態と理想の状態の両方の観点から具体化を図るアプローチも効果的です。

例えば、「部署間の連携を強化する」という曖昧な目標を、「部署間のコミュニケーションが図りやすい仕組み・風土への改善ができており、その結果、部署間で協力した共同商品が開発されているなど目に見えるアウトプットが出ている状態」として具体化することができます。

また、一定期間における最終的な理想像を達成するための、さらに小さな短期的な定性目標に分解することも大切です。同じ定性目標でも、短いスパンで分けられているほど、達成までに要する時間が短くなり、参加者のモチベーションを維持しやすくなります。

例えば、明日1月1日に『コーヒーを飲みながら本を読む。』というイメージの方が、11ヶ月後の11月11日に『コーヒーを飲みながら本を読む。』というイメージよりも達成しやすいですよね?

定性目標定量目標の順番

定性目標を定めたら、定量目標を定めよう

定性目標が明確になったら、次の大きなステップはそれを実現するための具体的な定量目標を設定することです。ただし、一度明確なビジョンである定性目標が定まれば、定量目標はいくつかの段階を経て、四半期ごとなど時間をかけて設定して問題ありません。

理想的な目標設定は、イメージできるビジョン(定性目標)を基盤に目標を逆算して設定するプロセスです。まず、目指すべき将来像や理想的な姿を明確にし、それを達成するための定性的な目標を定めます。その後、定性的な目標を実現するための具体的な数値目標を設定する流れが基本です。

例えば、「社会に貢献する企業になる」というビジョンに基づき、「〇〇エリアで認知率を今よりも10%高めて業界で真似される会社を目指す」という定性目標を掲げたとします。この場合、これを達成するために「経常利益○○万円を○○年までに達成する」という具体的な数値目標を設定します。

参考

SMARTの活用

ちなみに定量目標の設定では、SMART(Specific・Measurable・Achievable・Relevant・Time-bound)というフレームワークも活用できます。SMARTは、明確で測定可能、達成可能、関連性があり、期限が明確な目標を設定する手助けをしてくれますのでChat GPTなどで活用してみるのも面白いかもしれません。

Chat GPTで「〇〇という定性目標を達成するための、定量目標をSMARTのフレームワークで教えて。」など

理想の流れ

定性目標定量目標を達成する。気がつけば定量目標を達成する

定性目標定量目標の関係性を企業経営の枠組みで改めて整理してみます。シンプルに、『定性目標(ビジョン)が定量目標(ビジネス)の達成を促進する』という構造です。

従って、より具体的な理想の状態である定性目標は、実現可能で魅力的な定量目標を導いてくれます。そのような順番で理想の状態を設定することで、気がつけば定量目標を達成し、誰もが達成感を感じ、昨日よりも良い環境が構築できます。

定量目標のキーワードである、KPI(重要業績評価指標)とKGI(重要目標達成指標)の関係と同様に、すべての定性目標が、定量目標と因果関係でつながっています。定性目標定量目標の達成が、それぞれに相互に良いシナジーを生み出す設計がポイントです。

無意識の目標達成メカニズム

参加者がワクワクする定性目標に取り組むことで、気がつけば定量目標を達成しているという状況が生まれます。これは、定性目標が行動や意識の質的変化を促し、結果として数値的な成果につながるためです。

ビジョンとなる定性目標、魅力的ですよね?

大きなビジョンはコロコロ変えない方が良いですが、できれば短期的なビジョンとなる定性目標は毎月確認することをお勧めします。

定性目標の具体的な定め方

ここで効果的な定性目標を設定するヒントを少しだけ紹介します。

  • 『会社やブランドをどんなふうに見られたいか?思われたいか?』から考える全社定性目標

全社的な設定の場合、企業のビジョンと価値観の明確化が第一歩です。ビジョンは企業が目指す理想の未来像であり、企業の理念・志を表現するものです。

ビジョンを明確に示して明文化することで、企業はその実現に向けた価値観の形成が可能になり、従業員の意思決定や行動を正しい方向に導きやすくなります。さらに、社会貢献などをビジョンに織り込むことで、社外への訴求力も増します。

  • 『商品やサービスはどんなふうに使われたいか?』から考える部署や部門ごとの定性目標

商品やサービスの理想的な使用状況を想像することで、顧客体験の質的向上を目指す定性目標を設定できます。顧客の声を反映し、顧客の具体的なニーズを把握した顧客視点の定性目標はきっとユーザーやファンを増やします。

  • 『経営陣はどんな理想の状態になるか?従業員は?』から考える社員視点の定性目標

組織の各レベルにおける理想状態の設定についても同様です。例えば、経営陣については戦略的な意思決定能力や部門間の連携強化、従業員については主体性やコミュニケーション能力の向上など、それぞれの役割に応じた定性目標が数値目標よりも日々のモチベーションにつながる可能性があります。参加者によっては、数値達成に魅力を感じる場合もありますので、参加者に合わせた設定ができれば◎です。

  • 『顧客はどんなふうに他の人に自社の商品やサービスを伝える状態になるか?』から考える認知やプロモーション視点の定性目標

顧客のアドボカシー(推奨行動)の理想状態を描くことで、真の顧客満足度向上につながる定性目標を設定することもできます。推奨行動は、NPS(ネットプロモータースコア)などの指標と連動させることで、定量的な測定も可能になります。NPSだけにとどまらず、顧客視点のビジョンを設定できると良いですね。

  • 『新たなスタッフはどんな思いで自社を訪問するか?採用にどんな影響があるか?』から考える自社ブランド視点の定性目標

企業への応募者視点を取り入れた企業ブランディングの観点から定性目標を設定することで採用力がする可能性もあります。この観点では、さらにポジティブな成果として、企業文化の魅力的な醸成や、働きやすい環境の整備、成長機会の提供なども生まれるかもしれません。

  • 『1年後どんな会社になっているか?』から考える会社のスケール視点の定性目標

短期的な変化の具体的イメージを描くことで、持続可能な会社を経営することが可能になります。実行可能な定性目標を継続的に設定することで、長期ビジョンを短期目標に落とし込む企業存続のための重要なプロセスです。

定性目標達成の先に描く新たな定性目標とは?

経営者の質問設定能力が試される『定性目標設定』はいわゆるビジョンの概念です。

定性目標の真の価値は、継続的な成長サイクルを生み出すことにあります。

経営者は一定期間(四半期や年度)の間に現状を理解して、経営者自身やマネジメント層、社内それぞれに正しい質問を設定し続けることが重要な仕事です。経営者の正しい質問は、組織全体の学習能力と適応能力を向上させ続けます。

大きな定性目標でも達成は終着点ではなく、新たなレベルの定性目標設定の出発点です。達成された状態を新しい基準として、さらに高次の理想状態を描き続けることで、組織の継続的な成長と社会への貢献が可能になります。

まとめ

定性目標の重要性は、単に数値化できない目標を設定することではありません。

現状と理想から正しい質問を設定し、組織の理想像を明確に描き、それを実現するための継続的な改善サイクルを構築することにあります。経営者には、この理想の未来であるビジョンを思い描く力と、それを組織全体で共有するチカラ、そして、参加者がビジョンを実現していくためのマネジメント能力が求められているのです。

今のところ定性目標を設定するだけのお仕事のご依頼は受けていませんが、当社のプロジェクトマネジメントでは大切な概念です。まずは、御社内で生成AIを活用し『会社の定性目標となるイメージを作成して』とプロンプトを作成してみてはいかがでしょうか?

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