SHISEILABOマーケティング全体像 Step8 ブランド認知戦略・コミュニケーション設計

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はじめに

ここまでのStep1~7で、私たちはマーケティング戦略の基礎を構築してきました。

  • Step1で市場と競合を把握し
  • Step2で新しい市場カテゴリを創造し
  • Step3でターゲット顧客と戦略エクイティを定義し
  • Step4で実行する組織とマーケティングコンセプトを整備し
  • Step5で目標(OKR・KPI・定性目標)を設定し
  • Step6でブランド全体像(ブランドコンセプト、パーセプションフロー、アドオン最適化)を定義し
  • Step7でブランドポジショニング(STP、USP、RTB、KBF、ログライン)を明確にしました

しかし、ここまで進んでも、最も重要な問題が残ります

「顧客の心に、どのようにして、私たちのブランドを『認知』させるのか?」

言い換えれば、「市場に向けて、ブランドのメッセージを、どのように発信し、顧客の接点全体を、どう統合管理するのか?」という問題です。

これまでは「内向き」の準備段階(戦略立案、ブランド構築、ポジショニング定義)でしたが、Step8からは、いよいよ「外向き」の実行段階に入ります。つまり、ターゲット顧客に対して、実際にメッセージを発信し、ブランドの認知を獲得していく段階です。

Step8では、この実行段階のための、3つの重要な要素を学びます

  1. 認知獲得戦略の設計:ターゲット顧客にブランドをいかに認知させるか
  2. コミュニケーション設計:ブランドメッセージをいかに統一・展開するか
  3. 顧客接点の統合管理:複数チャネル・タッチポイント全体をいかに統合するか

これらを理解することで、「戦略の理想」を「市場での現実的な認知獲得」へと転換させることができるようになります。

第1章「認知」とは何か

認知(Awareness)の本質

認知=「ターゲット顧客が、あなたのブランドの存在を『知っている』という状態」ですが、「知っている」には、複数のレベルがあります。

認知のレベル

レベル1:最上位認知(Top of Mind)

顧客が、あるカテゴリーを考えた時に、最初に思い浮かぶブランド。

例えば、「コーラ」と言えば、多くの人が「コカ・コーラ」と答えるレベル。

レベル2:喚起認知(Aided Awareness)

複数のブランド名を見せられた時に、「あ、このブランド知ってる」と気づく状態。

最上位認知ではないが、存在は認識している。

レベル3:非喚起認知(Unaided Awareness)

促されずに、自分から「そういえば、こんなブランドあるな」と思い出す状態。

レベル4:露出認知(Exposure)

過去に、広告や情報に接したことがあるが、正確には覚えていない状態。

「どこかで見た気がする」程度。

なぜ認知が重要か

「ブランドのポジショニングが完璧なら、顧客は自動的に選んでくれるはず」

これは、大きな間違いです。どんなに優れたブランドでも、「顧客がそのブランドを知らなければ、選びようがない」のです。

認知獲得の段階的プロセス

認知は、段階的なプロセスがあります

STEP

初接触

広告を見て、初めてそのブランド名を知る

STEP

情報探索

そのブランドについてもっと知りたくなる

STEP

検討段階

他のブランドと比較して検討する

STEP

購買

実際にサービス商品を選択・購買する

STEP

ロイヤリティ

繰り返し購買、口コミ推奨

Step8の「認知戦略」は、この段階の最初の2段階(初接触~情報探索)を司るものです。

第2章 認知獲得戦略の設計-ターゲット顧客にブランドを知らせる

認知獲得戦略とは何か

認知獲得戦略=「ターゲット顧客に対して、どのようなメッセージを、どのメディア・チャネルを通じて、どの頻度で発信し、ブランド認知を獲得するのか、という総合的な戦略」

3つのメディア戦略

認知獲得には、複数のメディアが関与します。それを整理したのが、ペイド・オウンド・アーンド・メディアという分類です。

企業が、費用を払って、媒体社の広告枠を購入して、メッセージを発信するメディア。

具体例

  • テレビCM
  • 新聞・雑誌広告
  • デジタル広告(YouTube、Google、Facebook、Instagram、TikTokなど)
  • 交通広告(駅、電車内)
  • リスティング広告(検索連動型広告)

特徴

  • メリット:確実にターゲットに届く、規模感がコントロール可能、即効性がある
  • デメリット:費用がかかる、信頼度が低い(「企業の自己紹介」と見られる)、飽和状態

企業が自ら所有・運営するメディア。媒体社に依存せず、直接ターゲットと関係を構築するメディア。

具体例

  • ブランドのウェブサイト
  • SNS公式アカウント(Instagram、Twitter、Facebook、LINE等)
  • メールマガジン・ニュースレター
  • ブログ・オウンドメディア
  • モバイルアプリ
  • オンラインコミュニティ

特徴

  • メリット:継続的な顧客関係構築、信頼度が高い、自由度が高い、費用が安い
  • デメリット:認知獲得には時間がかかる、ファンが集まるまでの間は効果が限定的

企業が直接制作・配信していないが、「第三者が企業について発信してくれる」メディア。

具体例

  • 新聞・ニュース記事(PR効果)
  • インフルエンサーの言及
  • 顧客のSNS投稿・口コミ
  • レビューサイトでの評価
  • 顧客のブログ・SNS上での紹介
  • バイラル・Word of Mouth

特徴

  • メリット:信頼度が非常に高い(第三者推奨だから)、自然な拡散、費用がかからない
  • デメリット:コントロールが難しい、時間がかかる、確実性が低い

3つのメディアの統合戦略

効果的な認知獲得には、この3つのメディアを統合的に活用することが重要です。

典型的な統合戦略

STEP

フェーズ1:初期認知獲得 – ペイド・メディア活用

・YouTube・SNS広告で、ターゲットに初認知を与える

・費用をかけて、広くターゲットにリーチする

STEP

フェーズ2:関心深化 – オウンド・メディア活用

・ウェブサイト、SNS公式アカウント、メールマガジンで、ターゲットが詳しく情報を得られる環境を整備
・ファンと継続的な関係を構築

STEP

フェーズ3:信頼醸成 – アーンド・メディア活用

・実際のユーザーの口コミ、レビュー、インフルエンサー推奨で、第三者による信頼を獲得
・ブランド認知が確実化、ロイヤリティに進化

ターゲット別のメディア選定

「すべてのメディアが、すべてのターゲットに有効」とは限りません。

20代女性

最適なメディア:Instagram、TikTok、YouTube Shorts

スマートフォンで情報を得ており、ビジュアル重視、SNS内での口コミ信頼度が高い

スマートフォンヘビーユーザー

50代男性

最適なメディア:テレビCM、Yahoo!ニュース

テレビが情報源、PC利用も多いが、スマートフォンでのSNS利用は限定的

テレビをよく見る層

ビジネスパーソン

最適なメディア:ポッドキャスト、メールマガジン、LinkedInなど

隙間時間での情報消費を好む、仕事関連の情報源を信頼

忙しい層

認知獲得戦略の立案ステップ

STEP

ターゲット顧客の「メディア利用実態」を把握

  • 何のメディアを、どのくらい見ているか?
  • 何時間のテレビ、何時間のスマートフォン?
  • SNSは?新聞は?ラジオは?
  • 情報源として、何を信頼しているか?
STEP

各メディアの「到達可能性」を評価

  • テレビ:ゴールデンタイムなら、◎ターゲットに到達可能
  • Instagram:若年層なら◎、高齢層なら×
  • メールマガジン:既存顧客なら◎、新規顧客獲得には×
STEP

各メディアの「費用対効果」を計算

  • テレビCM:費用が高い、到達数が多い、効果が測定しにくい
  • Google広告:費用が柔軟、ROI測定が容易、でも競争が激しい
STEP

メディアミックスを決定

  • どのメディアに、どのくらい予算を配分するか
  • フェーズごとに、メディアをシフトさせるか

第3章 コミュニケーション設計-ブランドメッセージの統一

コミュニケーション設計とは何か

コミュニケーション設計=「ターゲット顧客に対して、『何を』『どのように』『どこで』『どの頻度で』伝えるのか、という統合的な設計」ここで重要なポイントは、「複数のメディア、複数のタッチポイントを通じて、同じメッセージが一貫して伝わるべき」ということです。

メッセージ・アーキテクチャ(メッセージの階層構造)

効果的なコミュニケーションには、メッセージに「階層構造」があることが重要です。

ブランドが最も伝えたい、最も重要なメッセージ。例えば、あるフィットネスアプリのコア・メッセージは、「毎日3分の運動習慣で、人生が変わる」このコア・メッセージは、全ての施策の根底にあります。

コア・メッセージを支える、3~5個のサブメッセージ。

上記のフィットネスアプリの場合

サポート・メッセージ説明
「忙しい社会人でも、続けられる設計」機能面の強み
「一人じゃない、仲間と一緒に成長」コミュニティの価値
「科学的な成果測定で、モチベーション維持」テクノロジーの価値
「初心者からプロレベルまで対応」幅広さ

各サポート・メッセージを支える、具体的な証拠や事例。例えば、「忙しい社会人でも、続けられる設計」というメッセージを支えるプルーフ・ポイントは…

  • 「平均継続率88%」
  • 「通勤時間に完結するプログラム」
  • 「ユーザーの90%が『習慣化できた』と回答」

メッセージのトーン・パーソナリティ

同じメッセージでも、「どのように伝えるか」で、大きく印象が変わります。ブランドが、どのような「人格」「雰囲気」「話し方」で、メッセージを伝えるのか。

例1:ラグジュアリー美容ブランド

  • トーン:洗練、格調高い、ちょっと難しい用語も使う
  • パーソナリティ:知的な女性、経験豊か、導く人
  • 言葉遣い:「最上質の」「心地よい」「自分への投資」
  • 絵柄:モノクロ、ミニマル、高級感

例2:フレンドリーなフィットネスアプリ

  • トーン:親しみやすい、励まし、楽しい
  • パーソナリティ:友人、チアリーダー、共感的
  • 言葉遣い:「一緒に頑張ろう」「すごい!」「楽しく続ける」
  • 絵柄:カラフル、動的、ポジティブ

チャネル別のメッセージ適応

重要なポイント:「コア・メッセージは同じ」だが、「チャネルに合わせてアレンジ」する必要があります。

テレビ・動画広告の場合

  • 形式:ストーリー仕立て、感情に訴える、15~30秒で完結
  • メッセージ:「毎日3分の運動習慣で、人生が変わる」
  • 表現:ビジュアルストーリー、音楽、登場人物の変化

SNS投稿の場合

  • 形式:短い文章、ビジュアル、ハッシュタグ
  • メッセージ:「今日も3分チャレンジ!あなたもやってみた?」
  • 表現:カジュアル、絵文字使用、ユーザー参加型

ウェブサイトの場合

  • 形式:詳細情報、データ、実例
  • メッセージ:「3分の運動習慣で、本当に人生は変わるのか?」→科学的根拠、ユーザー事例で解説
  • 表現:信頼できる、網羅的、詳しい

メールマガジンの場合

  • 形式:パーソナライズ、価値提供
  • メッセージ:「◎◎さんへ。あなたの目標達成を応援するコンテンツ」
  • 表現:個人名使用、あなた視点、行動喚起

複数の部門、複数のパートナーが関わる場合、統一されたコミュニケーション・ガイドラインを作成することが重要です。

ガイドラインに含まれるべき要素

コア・メッセージ

毎日3分の運動習慣で、人生が変わる

サポート・メッセージ

忙しい社会人でも、続けられる設計
一人じゃない、仲間と一緒に成長
科学的な成果測定で、モチベーション維持

トーン・パーソナリティ

親しみやすく、励ましてくれる友人
ポジティブで、楽しい
信頼でき、リード的

チャネル別の表現ガイド

テレビ:感情的ストーリーで、変化を見せる
SNS:カジュアル、参加型、ユーザー事例
メール:個人カスタマイズ、価値提供型
PR:科学的根拠、ニュース価値

禁止表現

根拠のない誇大表現は禁止
科学的根拠のない健康効果表示は禁止
他ブランドを貶める表現は禁止

承認フロー

すべてのコミュニケーション素材は、マーケティングディレクターの承認を得てから配信

第4章 顧客接点の統合管理-複数チャネルでの一貫性確保

顧客接点(タッチポイント)とは何か

顧客接点=「顧客がブランドと関わるすべての場面・場所・メディア」

例えば

  • 広告で初めてブランドを見る(広告接点)
  • SNSでブランド情報をフォローする(SNS接点)
  • ウェブサイトで詳しく調べる(ウェブ接点)
  • 実店舗に行ってみる(店舗接点)
  • 商品を購買する(購買接点)
  • 商品を使ってみる(使用接点)
  • カスタマーサービスに問い合わせる(サービス接点)

統合管理が必要な理由

ここで重要な質問があります。もし、これらの接点で、バラバラなメッセージ、バラバラな雰囲気、バラバラな対応がされたら、顧客はどう感じるでしょうか?

バラバラな場合

広告:「プレミアム、高級感」
SNS:「ポップ、カジュアル」
ウェブサイト:「科学的、難しい」
店舗:「淡々とした、事務的」
カスタマーサービス:「非常に親切、温かい」

顧客の感じ方:「このブランド、本当は何なんだろう…」
結果:信頼感が生まれず、選ばれない

統一された場合

広告:「親しみやすく、でも信頼できる」
SNS:「同じトーンで、親しみやすく」
ウェブサイト:「詳しいけど、親しみやすい」
店舗:「親切で、温かい」
カスタマーサービス:「同じく親切で温かい」

顧客の感じ方:「このブランド、一貫しているな。信頼できる」
結果:強いブランドイメージが形成される

オムニチャネル戦略(Omnichannel Strategy)

顧客接点を統合管理する戦略を、オムニチャネル戦略と呼びます。

従来のマルチチャネルとの違い

マルチチャネル戦略:「複数のチャネルで、同じ商品を売る」

例:「ウェブでも、店舗でも、カタログでも、同じ商品を販売する」

オムニチャネル戦略:「複数のチャネルで、シームレスな顧客体験を提供する」

例:「ウェブで見つけた商品を、店舗で購買。その後、メールで最適な関連商品を提案。問い合わせは、どのチャネルからでも対応。」

オムニチャネル実現の4つの要件

要件1:メッセージ一貫性(Message Consistency)

すべてのチャネルで、同じコア・メッセージが伝わる。

要件2:データ統合(Data Integration)

顧客情報が、すべてのチャネル間で共有される。

例:顧客がウェブで検索したことが、店舗スタッフに見え、それに基づく提案ができる。

要件3:体験の連続性(Experience Continuity)

顧客が、チャネルを移動しても、体験が途切れない。

例:ウェブで途中まで見ていた商品を、スマートフォンアプリで続きから見られる。

要件4:タイミング・頻度の最適化(Timing & Frequency Optimization)

「適切なタイミング」に「適切な頻度」で、「適切なメッセージ」を届ける。

例:購買後3日で「ご利用ありがとうございます」メール、1週間後に「使ってみた感想は?」アンケート、2週間後に「関連商品のご案内」

顧客ジャーニー全体での接点統合

ここで、顧客ジャーニーの各段階での、接点統合を考えます。

段階1:認知段階

  • タッチポイント:YouTube広告、TikTok、インフルエンサー投稿
  • 統合管理のポイント:すべてが同じトーン・メッセージ、ブランド名は統一、CTA(行動喚起)が一貫

段階2:検討段階

  • タッチポイント:ウェブサイト、SNS公式、メールマガジン、カスタマーサービスチャット
  • 統合管理のポイント:詳しい情報が全チャネルで得られる、質問への対応が迅速で一貫、顧客が段階的に深い情報を得られる

段階3:購買段階

  • タッチポイント:EC(オンライン購買)、店舗(店舗購買)、アプリ
  • 統合管理のポイント:どのチャネルからでも購買できる、支払い方法が統一、配送情報が全チャネルで追跡可能

段階4:使用段階

  • タッチポイント:商品、パッケージ、付属のガイド、動画チュートリアル、SNS
  • 統合管理のポイント:使用方法が、複数形式(紙、動画、SNS)で提供、問題発生時のサポートが即座

段階5:ロイヤリティ段階

  • タッチポイント:メール、SNS、ロイヤリティプログラム、コミュニティ、カスタマーサービス
  • 統合管理のポイント:顧客が、複数の接点で「大切にされている」と感じる、購買履歴に基づいたパーソナライズされた提案

オムニチャネル実装の実践ステップ

ステップ1:顧客ジャーニーマップの作成

ターゲット顧客が、認知から購買までどのような経路をたどるのか、可視化する。

ステップ2:各段階での「理想的な接点」を定義

「ここで、何を、どのように伝えるべきか」を定義。

ステップ3:現在のギャップを把握

「現在は、何ができていて、何ができていないか」を分析。

ステップ4:優先順位を決定

すべてを一度には実装できないので、最も重要な接点から着手。

ステップ5:各チャネルのオーナーを決定

責任者なしには、統合は実現できない。各チャネル(SNS、ウェブ、店舗など)ごとに、責任者を決める。

ステップ6:定期的な検証と改善

オムニチャネル戦略は、継続的な改善が必要。月次で、各チャネルの一貫性、顧客満足度を測定。

第5章 Step8での3つのゴール統合

ゴール1:認知獲得戦略の設計 ✓

ここまでで、以下が実現します

  • ターゲット顧客の「メディア利用実態」を把握
  • ペイド・オウンド・アーンドメディアの役割を理解
  • 自社の「メディアミックス」を決定
  • 各メディアでの「認知獲得目標」(KPI)を設定

具体的な成果物

  • メディア計画表(どのメディアに、いつ、いくら投資するか)
  • 各メディアの「到達目標」(リーチ、フリークエンシー)

ゴール2:コミュニケーション設計 ✓

ここまでで、以下が実現します

  • ブランドの「コア・メッセージ」が決定
  • サポート・メッセージが3~5個定義
  • チャネル別の「メッセージ適応」方法が定義
  • トーン・パーソナリティが決定

具体的な成果物

  • コミュニケーション・ガイドライン
  • チャネル別メッセージ表
  • クリエイティブ方向性(ビジュアル、言葉遣いなど)

ゴール3:顧客接点の統合管理 ✓

ここまでで、以下が実現します

  • 顧客ジャーニーの各段階が把握される
  • 各段階での「理想的な接点」が定義される
  • 接点間の「メッセージ一貫性」が確保される
  • データ共有の必要性が明確化
  • 体験の「シームレスさ」の目標が定義

具体的な成果物

  • 顧客ジャーニーマップ
  • 接点統合表(各段階で、どのチャネルが関与するか)
  • オムニチャネル実装ロードマップ

第6章 Step8完了後の全体像

Step8を完了すると、以下の状態が実現します。

状態1:認知戦略が明確

  • ターゲット顧客に、いかにアプローチするかが決まっている
  • メディアミックスが決定され、予算配分が明確
  • 各メディアでの成功指標(KPI)が設定されている

状態2:メッセージが統一

  • ブランドの「言いたいこと」が一つに整理されている
  • すべてのステークホルダー(社員、パートナー、代理店)が、同じメッセージを理解している
  • チャネルごとに、メッセージをどう変えるかも決まっている

状態3:顧客体験が統合

  • 複数のチャネルが、一つの「顧客ジャーニー」に統合されている
  • 顧客がどこで接点を持っても、一貫した体験が得られる
  • 組織全体が、「オムニチャネル」という共通目標を理解している

状態4:実行の準備が完了

これからのStep9以降では、このStep8で定義された戦略に基づいて、以下が実行されます:

  • 実際の広告・コンテンツ制作
  • メディア購買と配信
  • 接点システムの構築(CRM、マーケティングオートメーションなど)
  • KPI測定とダッシュボード管理

第7章 陥りやすい間違い

すべての人に、ブランドを認知させることは、時間的にも費用的にも現実的ではありません。ターゲット顧客の中での「認知率目標」を現実的に設定する(例:50%~70%)。

すべてのメディアに投資することは、焦点をぼやかし、効果を減少させます。ターゲットの「メディア利用実態」に基づいて、3~4つのメディアに集中投資する。

チャネルごとに全く違うメッセージを作ると、ブランドが分散します。コア・メッセージは同じ。チャネルの特性に合わせて、表現をアレンジするのみ。

オムニチャネルの成功は、「システム導入」ではなく「組織的なコミットメント」が最重要です。各チャネルの責任者が、一堂に会して、定期的にコミュニケーションの一貫性を確認する。

認知は、一度の施策では獲得できません。継続的な投資と改善が必要です。認知戦略を「年間計画」として立てる。四半期ごとに効果を測定し、改善する。

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