はじめに
ここまでのStep1~9で、私たちはマーケティング戦略の完全な基礎を構築してきました。
- Step1~3で市場分析、ターゲット定義、価値創造を進め
- Step4~6で組織整備、目標設定、ブランド全体像を構築し
- Step7で市場でのポジショニングを明確にし
- Step8でブランド認知戦略とコミュニケーション設計を完成させ
- Step9でアクセス設計、嗜好定義、販売戦略を構築しました
しかし、ここまで進んでも、最も実践的な問題が残ります。
「これまで定義した『コンセプト』を、実際に『ブランド体験』として、『メッセージ』として、『実行施策』としていかに展開するのか?」言い換えれば、「抽象的な戦略を、顧客が感じられる『現実』に変えるには、どうするのか?」という問題です。
Step10までの戦略は、いわば、「建築の設計図」です。でも、顧客は、設計図では生活できません。顧客が体験するのは、「完成した建物」なのです。Step10では、この 「設計図から現実へ」 の転換を実現するための、3つの要素を学びます。
- コンセプト展開:戦略を、複数のメディア・タッチポイントで、統一されたメッセージとして展開
- コピー戦略:ブランドメッセージを、顧客の心に届く『言葉』へと具体化
- コンセプチュアル・セル効果:統一されたコンセプトが、指数関数的な相乗効果を生むメカニズム
これらを理解することで、あなたは「優れた戦略」を「市場で実感できる、強いブランド体験」へと転換させることができるようになります。
第1章:ブランドコンセプト展開の本質 – 戦略から現実へ
Step10が重要な理由「マーケティング劇場」の完成
多くの企業は、以下のような問題に直面しています。
「戦略は素晴らしいのに、市場での反応がイマイチ」
「いろいろなキャンペーンをやってるのに、ブランドイメージがぼやけている」
「施策ごとに、別のエージェンシーやチームがやってるから、メッセージがバラバラ」
これらの問題の根本原因は、『コンセプト展開の欠落』です。つまり、優れた戦略・ポジショニング・メッセージアーキテクチャが定義されていても、それが 「実際の顧客接点で、統一されたメッセージとして実現されていない」 ということです。
戦略と実行のギャップ
ここで、重要な図式があります
Step7(ポジショニング):「市場での立場」が定義される
Step8(コミュニケーション設計):「メッセージ体系」が定義される
↓
ここまで:「頭の中の計画」の段階
↓
Step10(コンセプト展開):「実際の市場」で実現される
Step10は、この 「頭の中から市場へ」 の転換点なのです。
コンセプト展開の定義
コンセプト展開=「ブランドポジショニング + マーケティングコンセプト + 販売戦略」を統合した『コアコンセプト』を、複数のメディア・チャネル・タッチポイントで、統一性を保ちながら、各チャネルの特性に適応させて、実行するプロセス」
言い換えれば
「同じ中身を、異なるフォーマットで、複数の場所で、繰り返し表現すること」
なぜ「統一性」が重要か
顧客は、複数のタッチポイントでブランドと接点を持ちます
- テレビで広告を見る
- SNSでフォロー
- ウェブサイトで詳しく調べる
- 店舗で実物を見る
- 購買後、メールでサポートを受ける
もし、これらすべてで『異なるメッセージ』が伝わったら、どうなるでしょうか?
顧客の頭には、以下のような混乱が生まれます
TV:「プレミアム、高級感」
SNS:「カジュアル、若々しい」
ウェブ:「科学的、データ重視」
店舗:「親しみやすい、実用的」
メール:「特別感、VIP対応」
顧客の感じ方:「このブランド、何なんだろう?」
結果:信頼の欠落 → 選ばれない
対照的に、統一されたコンセプトがあると
TV:「親しみやすく、でも信頼できる」
SNS:「同じトーンで、親しみやすく」
ウェブ:「詳しいけど、親しみやすい」
店舗:「親しみやすく、温かい」
メール:「同じく親しみやすく、温かい」
顧客の感じ方:「このブランド、一貫している。信頼できる」
結果:強いブランドイメージが形成 → 選ばれやすい
Step1~9との関連性
ここまでで構築した要素が、Step10でいかに活かされるかを示します:
Step 1-3(市場・ターゲット・価値)
↓
「何を誰に売るか」が定義
Step 4-6(組織・ブランド・目標)
↓
「どんなブランドキャラで売るか」が定義
Step 7(ポジショニング)
↓
「市場での立場」が定義
Step 8(コミュニケーション設計)
↓
「メッセージ体系」が定義
Step 9(販売戦略)
↓
「顧客アクセスと嗜好」が定義
Step 10(コンセプト展開)→ ここで全てが統合される
「戦略全体が、統一されたメッセージで、市場に実現される」
第2章:コンセプト展開戦略 – 複数メディアでの統一と適応
コンセプト階層の理解
コンセプト展開には、複数のレベルがあります。
レベル1:コアコンセプト(最も抽象的)
ブランドが最も伝えたい、1~2文で表現される『中核的なアイデア』
- 短く、シンプル
- あらゆるメッセージの根底
- 1~2秒で理解できる(エレベーターピッチレベル)
フィットネスアプリのコアコンセプト:
「毎日3分で、人生が変わる」
美容ブランドのコアコンセプト:
「自分らしい美しさを、誰もが手に入れられる」
会計ソフトのコアコンセプト:
「経理は、もっと簡単であるべき」
レベル2:拡張コンセプト(中程度の抽象)
コアコンセプトを、複数の『視点』から展開したもの。通常、3~5個のサポートコンセプトが存在します。
例:フィットネスアプリ
コアコンセプト:「毎日3分で、人生が変わる」
拡張コンセプト1(機能的):
「効率性:短時間で、最大の効果」
拡張コンセプト2(感情的):
「安心感:続けられる、成功する」
拡張コンセプト3(ライフスタイル):
「統合:日常生活の自然な一部」
拡張コンセプト4(コミュニティ):
「所属感:同じ目標の人たちと共に」
レベル3:メディア別コンセプト(具体的)
各メディア・チャネルに適応させたコンセプト。同じコアコンセプトを維持しつつ、各メディアの特性に合わせた表現。
コアコンセプト:「毎日3分で、人生が変わる」
【テレビCM】
「変身ストーリーコンセプト」
- 30秒で、ビフォー・アフター
- 感情的、感動的
- 「人生が変わった人の物語」
【Instagram投稿】
「日常のリアルコンセプト」
- 実ユーザーのビフォー・アフター
- 親しみやすい、本当っぽい
- 「あなたも、できる」
【メールマガジン】
「個人カスタマイズコンセプト」
- 受け取り手の進捗に合わせた情報
- 励まし、実用的ティップス
- 「あなたのペースで、成功へ」
【ウェブサイト】
「教育的コンセプト」
- 詳しい説明、科学的根拠
- 信頼できる、計画的
- 「こうして、人生が変わる」
チャネル別展開のポイント
各メディアに合わせて、コンセプトを『適応』させることが重要です。
しかし、適応するあまり、『コアコンセプト』が失われてはいけません。
チャネル適応の原則
原則1:コアコンセプトは、いかなる場合も『同じ』
例えば、フィットネスアプリが:
TV:「ハード、徹底的なトレーニング」
SNS:「楽、簡単なワークアウト」
と表現したら、顧客は混乱します。
「結局、どっちなんだ?」と信頼が失われます。
正しくは
TV:「短時間で、効果的。それが、3分の秘密」(コアコンセプト:3分で効果)
SNS:「3分で、気持ちいい。毎日続く理由」(コアコンセプト:3分で実現)
同じコアコンセプト(3分で変わる)を、異なる視点(効果 vs. 続きやすさ)から表現しているのです。
原則2:チャネルの『パーソナリティ』に合わせて、『トーン・表現』を調整
TV:感情的、ビジュアル重視、大規模感
SNS:親しみやすい、会話的、個人的な声
ウェブ:論理的、詳しい、包括的
原則3:チャネルの『制約』に合わせて、『メッセージ量』を調整
TV広告30秒:「毎日3分で、人生が変わる」のみ
SNS投稿:「3分で効果 + 続けられる + 実ユーザー事例」
ウェブランディングページ:「全ての拡張コンセプト + 詳しい説明 + 科学的証拠」
統一性をチェックするフレームワーク
展開したコンセプトが、本当に『統一』されているかをチェックする方法があります。
チェック1:コアコンセプト認識テスト
「すべてのメッセージから、一つの『中核的なアイデア』が感じられるか」
テスト方法:
複数のメディア素材(TV、SNS、ウェブなど)を見て、
「このブランド、何が言いたいのか」と聞く。
✓ 合格:答えが全員一致、または共通の認識がある
✗ 不合格:答えがバラバラ、ブランドのアイデンティティが不明確
チェック2:トーン・パーソナリティ一貫性テスト
「ブランドの『人格』が一貫しているか」
テスト方法:
複数のメッセージを見て、
「このブランド、どんな人格?」と聞く。
✓ 合格:「親しみやすくて、でも信頼できる」など、一貫した回答
✗ 不合格:「高級」と答える人、「カジュアル」と答える人で分かれる
チェック3:視覚的統一性テスト
「見た目(カラー、デザイン、ビジュアルスタイル)が統一されているか」
テスト方法:
複数のメディアの視覚的要素を見て、
「これらが同じブランドだと思うか」と聞く。
✓ 合格:すぐに「同じブランド」と認識
✗ 不合格:「別のブランドかと思った」という回答が複数
第3章:コピー戦略と策定プロセス – ブランドメッセージを言葉に
コピーとは何か
コピー=「ブランドが『何を言いたいのか』を、顧客の心に『届く言葉』で表現したもの」つまり、コピーは、「戦略を『言葉』に翻訳する」 プロセスです。
優れたコピーの特徴
特徴1:『利益』を伝える(製品特性ではなく)
悪いコピー:「当社の製品は、AI技術を搭載し、〇〇アルゴリズムを使用しています」
良いコピー:「あなたの人生から、面倒な作業を取り除きます」
前者は「製品の特性」を述べているだけですが、後者は「顧客が得られる利益」を述べています。
特徴2:『感情的』である
単なる論理的説明ではなく、心に訴えかけることが重要です。
論理的だけ:「このソフトウェアは、作業時間を50%削減します」
感情的な側面を加える:「やっと、会議後の報告書から解放される。もっと大切なことに時間を使える」
特徴3:『シンプル』で『わかりやすい』
複雑な表現では、メッセージは伝わりません。
複雑:「革新的なテクノロジープラットフォームの統合により、ユーザーエクスペリエンスの最適化を実現します」
シンプル:「3分で完成」
特徴4:『行動喚起』を含む
単に伝えるだけでなく、「次に何をすべきか」を明確に示すことが重要です。
伝えるだけ:「私たちのアプリは、素晴らしいです」
行動喚起を含む:「今すぐ、無料で試してみましょう」
コピー開発の6段階プロセス
ステップ1:入力情報の収集
開発を始める前に、以下の情報を集めます:
- ブランドポジショニング:市場での立場、USP、RTB
- ターゲット顧客インサイト:顧客のニーズ、欲求、痛み
- 購買決定要因(KBF):顧客が購買を決める際の重要要因
- チャネル要件:TV 30秒、メール200語など
- フォーマット制約:画像、文字数、時間など
ステップ2:主要感情の特定
「顧客に、どのような感情を持たせたいのか」を明確にすること。
感情の種類:
| 感情 | 例 |
|---|---|
| 恐怖・安心 | 「あなたのデータは、完全に安全です」 |
| 欲求・渇望 | 「あなたも、できる」「なりたい自分になれる」 |
| 所属・帰属 | 「仲間と一緒に」「コミュニティの一員」 |
| 達成・成功 | 「目標を達成する」「成功する」 |
| 安心・解放 | 「心配ない」「やっと楽になる」 |
| 喜び・楽しさ | 「楽しい」「嬉しい」「ワクワク」 |
ステップ3:機能的メッセージの決定
「顧客が得られる、具体的な利益は何か」を決定します。
ターゲット:時間がない30代ビジネスパーソン
機能的メッセージ:「月30時間の節約」
ステップ4:ヘッドライン(主見出し)の作成
ヘッドラインは、コピーの最も重要な要素です。
なぜなら、ヘッドラインだけ読んで、続きを読まない人も多いからです。
ヘッドラインの公式
| 公式 | 例 |
|---|---|
| 利益ベース | 「月30時間を取り戻す」 |
| 具体的数字 | 「3分で、完成」 |
| 問い形式 | 「あなたは、本当に忙しいのか?」 |
| 驚き・好奇心 | 「これをやめたら、人生が変わった」 |
ステップ5:サポートコピーの開発
ヘッドラインの後に続く、副見出しと本文を作成します。
構造
ヘッドライン(1~2行)
↓
副見出し(2~3行、ヘッドラインの詳細説明 + 信頼構築)
↓
本文(4~8行、ストーリー + 利益の詳細説明 + 証拠)
↓
行動喚起(1行、次のステップ)
例
【ヘッドライン】
「月30時間を取り戻す」
【副見出し】
多忙なビジネスパーソンが、報告書作成から解放される理由。
すでに5万人が、時間を取り戻しました。
【本文】
あなたは毎日、数時間を報告書作成に費やしていないでしょうか?
月30時間。1年で360時間。人生の14日分です。
当社のソフトウェアは、AIが自動で報告書を作成します。
結果、平均月30時間の削減を実現。
実ユーザーの声:「自分のやるべき仕事に、時間が使える」
【行動喚起】
今すぐ、14日間の無料トライアルを始めましょう。
ステップ6:テストと改善
作成したコピーが、本当に『機能』しているかをテストします。
テスト項目
□ 明確性:主張が明確に理解できるか?(読者が「何なんだ?」と思わないか)
□ 関連性:ターゲット顧客に、個人的に関連しているか?
□ 信頼性:主張は、信じるに足るものか?(証拠、実例がサポートしているか)
□ 行動性:読んだ後、「やってみたい」と思うか?
□ ユニーク性:競合と区別できるか?(差別化が明確か)
チャネル別コピーの違い
同じコアメッセージでも、チャネルによって、表現方法が異なります。
テレビCMのコピー
特徴
- 冒頭の3秒で、視聴者の注意をつかむことが最重要
- ビジュアルとの組み合わせ(映像が大半を説明)
- 短く、シンプル
- 音声は、補助的役割
例
映像:忙しい女性が、3分で美しくなる様子
音声:「3分で、美しく。」(画面に同じ字幕)
メールのコピー
特徴
- 件名がクリックされるかどうかで、全て決まる
- 個人的、直接的な語調
- 利益が明確
- 行動喚起が強い
例
件名:「明日から、月5000円の節約が可能」
本文:
こんにちは、Aさん。
Aさんの場合、当社のサービスを使うと、
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1年で¥60,000。子どもの教育費に、
または、好きなことに使える金額です。
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ソーシャルメディアのコピー
特徴
- 最初の1~2行で、スクロール停止させることが最重要
- 会話的、親しみやすい
- ハッシュタグ、絵文字活用
- シェア・コメント・クリック喚起
例
最初の1行:「あなたも、3分で変わる」
本文:
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第4章:マーケティングコンセプト実行とコンセプチュアル・セル効果
コンセプチュアル・セル効果とは何か
コンセプチュアル・セル効果=「複数のメディア・チャネルで、統一されたコンセプトを展開することで、単なる『足し算』では説明できない『相乗効果』が生まれる現象」つまり、「1+1が2ではなく、3にも5にもなる」 というメカニズムです。
統一メッセージの力
散在したメッセージの場合
企業が複数のキャンペーンを実行する際、各キャンペーンが『異なるメッセージ』を伝えると:
キャンペーン1(TV):「プレミアムな品質」
→ 100万人に到達
キャンペーン2(SNS):「手頃な価格」
→ 50万人に到達
キャンペーン3(メール):「環境配慮」
→ 30万人に到達
キャンペーン4(PR):「革新的技術」
→ 20万人に到達
合計:200万人に到達(人数では足し算)
でも、『メッセージ認知』は?
→ 各キャンペーン独立で、相互強化がない
→ ブランド認知は、期待より低い
統一されたコンセプトの場合
すべてのキャンペーンが、『同じコアコンセプト』を、チャネルに合わせて表現すると:
キャンペーン1(TV):「人生が変わる」(感情的版)
→ 100万人に到達
キャンペーン2(SNS):「人生が変わる」(実例版)
→ 50万人に到達
キャンペーン3(メール):「人生が変わる」(実用的版)
→ 30万人に到達
キャンペーン4(PR):「人生が変わる」(実績版)
→ 20万人に到達
合計:200万人に到達(人数は同じ)
でも、『メッセージ認知』は?
→ 各キャンペーンが相互強化する
→ 同じコンセプトに複数回接触
→ ブランド認知は、期待の3~5倍
コンセプチュアル・セル効果のメカニズム
メカニズム1:メッセージの重積(Message Accumulation)
同じメッセージに複数回接触することで、脳に強く刻み込まれます。
接触回数1回:「聞いたことがある」レベル
接触回数3回:「覚えている」レベル
接触回数5回:「自分の信念になっている」レベル
接触回数7回+:「無意識に思い出す」レベル
統一されたコンセプトなら、顧客は異なるチャネルで『同じメッセージ』に複数回接触するため、記憶定着率が格段に高まります。
メカニズム2:クロスチャネル相互強化(Cross-Channel Reinforcement)
異なるチャネルでの複数接触が、相互に強化しあいます。
例:「毎日3分で、人生が変わる」というコンセプト
TV を見た人が:
→ SNS でも、同じメッセージを見る
→ 「あ、このブランド、本気で言ってるんだ」と信じやすくなる
→ ウェブサイトで、詳しい情報を確認する
→ 「本当に効果があるんだ」と確信に変わる
各チャネルが、他のチャネルの信頼性を高めている
メカニズム3:信頼感の構築(Credibility Building)
『異なる源からの同じ情報』は、信頼感を大幅に高めます。
TV だけ:「企業の一方的な主張」 → 信頼度 20%
SNS + TV:「メディアと、ユーザーの声」 → 信頼度 50%
PR + SNS + TV:「第三者、ユーザー、メディア」 → 信頼度 85%+
コンセプチュアル・セル効果の数値化
実際の研究・事例から見えてくる、統一メッセージの効果:
効果1:ブランド認知
バラバラなメッセージ:市場における認知率 15%
統一されたコンセプト:市場における認知率 65%
→ 4.3倍の向上
効果2:購買意向
バラバラなメッセージ:購買意向 8%
統一されたコンセプト:購買意向 52%
→ 6.5倍の向上
効果3:ブランド好意度
バラバラなメッセージ:好意度スコア 3.2 / 5
統一されたコンセプト:好意度スコア 4.6 / 5
→ 43%の向上
効果4:プレミアム価格受容
バラバラなメッセージ:競合比プレミアム価格受容度 0%
統一されたコンセプト:競合比プレミアム価格受容度 25%
→ プレミアム価格化が可能に
マーケティングコンセプト実行チェックリスト
Step10 を成功させるために、以下をチェックしましょう:
チェック項目1:コアコンセプト明確性
□ コアコンセプトが、1~2文で、明確に定義されているか
□ すべてのステークホルダーが、同じコアコンセプトを理解しているか
□ コアコンセプトが、ブランドガイドラインに記載されているか
□ 新しい施策を検討する際、常にコアコンセプトに対して「これは、コアコンセプトを支持しているか」と問い直しているか
チェック項目2:展開の一貫性
□ TV、SNS、メール、ウェブ、PR のメッセージを、並べて見たとき、統一感があるか
□ トーン・パーソナリティが、チャネル間で一貫しているか
□ ビジュアル・デザイン要素が、チャネル間で一貫しているか(ロゴ、カラー、フォントなど)
チェック項目3:チャネル適応の適切性
□ 各チャネルが、その特性に合った形でコンセプトを展開しているか
□ TV の30秒版と、ウェブの長文版で、同じコアコンセプトが伝わるか
□ 各チャネルは、顧客が『そのチャネルで自然』と感じるか
チェック項目4:タイミング・調整
□ キャンペーンが、重複的に展開されているか(同時期に複数チャネルでメッセージを発信しているか)
□ マーケティングカレンダーに、全チャネルが可視化されているか
□ キャンペーン間の『相乗効果』を、意図的に狙った設計になっているか
チェック項目5:測定とフィードバック
□ ブランド認知、好意度、購買意向などのメトリクスを、施策前後で測定しているか
□ 各チャネルの『相乗効果』を分析しているか(複数チャネルに接触した人の方が、より高い購買意向か)
□ テスト結果を踏まえて、コンセプト・メッセージをアップデートしているか
実践例:コンセプチュアル・セル効果の事例
事例1:Nike – 「Just Do It」
コアコンセプト:「行動こそが、変化をもたらす」
展開
TV:アスリートが限界を超える物語
SNS:一般ユーザーが挑戦する瞬間
店舗:「今すぐ、始められる」というセットアップ
ウェブ:トレーニング方法の詳しいガイド
結果
- ブランド認知:85%+
- ブランド好意度:最高レベル
- プレミアム価格受容:20~30%
- ブランドエクイティ:業界トップ
事例2:Airbnb – 「Belong Anywhere」
コアコンセプト:「どこでも、自分の家のように」
展開
TV:世界中の『belong』の瞬間
SNS:ホストとゲストの関係構築
メール:個別のお勧め体験
PR:「新しい旅のカテゴリーを創造」という報道
結果
- グローバル認知:60%+
- ブランド好意度:非常に高い
- 急速な事業成長
- 上場企業へ
まとめ:Step10からのブランド・エクイティ構築
Step10は、「戦略を市場現実に転換する最初の重要なステップ」 です。
- コンセプト展開を通じて、戦略を複数メディアで統一的に実現
- コピー戦略を通じて、ブランドメッセージを心に届く言葉に
- コンセプチュアル・セル効果を通じて、統一メッセージから指数関数的な相乗効果を生成
これら3つが統合されるとき、初めて、「強い、揺るがないブランド・エクイティが構築される」のです。
Step11以降では、このStep10で完成したコンセプト展開に基づいて、以下が実行されます:
- 実際のキャンペーン実行
- メディアプランニング
- クリエイティブ制作の最終化
- 実施後の測定と最適化
シセイラボが提案する「創造性で資産を増やす」マーケティングは、Step10で、ようやく 「市場で体験できる、真のブランド資産」として形を持つのです。
